■新オフィス古紙回収ビジネス?

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回収コストは?

分別が基本です 最近、あちこちで耳にするオフィス古紙回収ビジネスがあります。私のところに来たチラシによると、回収専用段ボール箱(有料)に古紙をためておくと業者が回収に来るというものです。代金は箱を購入すれば回収は無料です。同様のシステムで何社かあるようですが、手元にあるチラシでは専用BOX10箱入りで6,800円となっています。つまり1箱680円です。
 その業者によると、この箱は約37リットル(440×310×270ミリ)の容量があって、紙ならば25〜30キログラム入るということです。しかし、通常我々が使用しているコピー用紙(64グラム/1平方メートルなのでA4用紙500枚で約2キログラム)を隙間無く詰めたとしても約26キログラムですから、実際はそんなには入らないでしょう。(箱一杯水を汲んでも37キログラムです...)
 まあ、それでも比重の重い紙?を大量に詰めて30キログラム入ったとしても、1キログラム当たりの回収費用は22.6円です。北区オフィス町内会の実績13.7円には遠く及びません。

古紙の分別不要?

 しかし、問題はコストではないのです。本来は、こういったサービスを提供する業者が増えれば、我々利用者側の選択肢が拡がって歓迎すべきことなのですが、このチラシのような業者は「古紙の分別不要」をうたい文句にしているのです。実際に分別を実行している我々からすると、分別は慣れてしまえばそれ程手間ではないことが分かるのですが、「面倒な分別不要」とチラシに書いてあると、利用者はラクそうな方へ安易に流れがちです。その結果、古紙を分別するシステムを放棄した社会が出来上がってしまうことが問題なのです。

もっと再生紙を使おう

 さて、我々は何のために一生懸命古紙を分別しているのでしょうか。もともと我が国は「ちり紙交換」の文化が根付いてる古紙リサイクル優等生です。従って回収された古紙が再生紙需要を上回り、古紙の価格が殆どゼロに近くなったことはご承知の通りです。(ごく最近は古紙価格相場は上がりつつありますが...)
 この古紙余りを解消するには再生紙をもっと積極的に利用するしかないのです。その切り札が今我々が取り組もうとしている地域循環ペーパーなのです。

印刷用紙としての再生紙利用

分別が基本です 再生紙を利用するといっても色々な種類があります。まず、代表的なものが段ボールです。現在再生紙配合率が最も高い製品が段ボールなどの板紙類です。その次に身近なのはトイレットペーパーなどの家庭紙です。これらに再生原料が多く使われる理由は、印刷用紙ほど高い品質を要求されないということです。(チラシの業者も板紙や家庭紙に再生すると言っています)
 オフィス町内会の分別マニュアルにもある通り、再生過程で色紙、感熱紙、カーボン紙等が混入するとピッチと呼ばれる点々が出来て、印刷用紙には向かないのです。しかし、板紙や家庭紙は古紙が飽和状態にあり、この分野で再生紙の利用率を高めるのは今後難しくなりつつあります。従って、高品質な印刷用再生紙を市場に循環させて、さらに再生紙利用率を上げるためには、精度の高い分別が必要なのです。

最後は古紙の輸出という手段

 また、古紙は輸出されるようにもなってきています。アジア各国からは日本の古紙は品質が高く喜ばれています。しかし、日本から輸出される古紙は何度も再生を繰り返したものが多く、紙そのものの品質が良いわけではありません。紙は無限に再生が出来るものではなく、再生を繰り返して繊維がくたびれてきた古紙には、バージンパルプやそれに近い品質の古紙を混ぜながら再生するのです。
 それでも日本の古紙が喜ばれる理由はどこにあるのでしょうか。アメリカは日本に並ぶ古紙輸出大国です。さらに、日本のように自国内で再生を繰り返していないため繊維はしっかりしています。しかし、古紙回収システムや国民の意識にもよるのでしょうが、アメリカの古紙は分別の精度が低く、どちらかというとゴミそのものの扱いで輸出されてきます。猫や犬の死骸が混入していることもあるそうです。このような古紙では、輸入する側で分別するとコストがかかりすぎるために敬遠されます。

静脈産業の健全な育成

 以上で分別の重要性はご理解いただけたことと思います。名古屋市の事業系一般廃棄物の全量有料化で、このチラシのような業者にも古紙がドッと流れ込むことになるのでしょうが、その結果は飽和状態の板紙類を増やすことになり、ひいては再生板紙を生産している工場の経営も圧迫するのではないでしょうか。我々排出事業者には、目先にとらわれずリサイクルという静脈産業を育成していく責任があるのです。

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