■古紙再生工場見学

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工場見学 平成12年4月10日に東区オフィス町内会が主催して製紙工場見学が実施されました。我々の見学を快くお引き受けいただいたのは、愛知県尾張旭市に工場を持つ株式会社トキワ様です。株式会社トキワ製紙事業本部は昭和39年に発足し、現在は洋紙原料(古新聞)400トン/日、板紙原料(古段ボール)330トン/日を再生することにより、印刷用紙及び段ボール中芯原紙を生産しています。

 洋紙原料となる古紙は、その表面の印刷インキを特殊な薬品によって分離する「脱墨工程」でインキ粒子のみを除去し、除塵工程でホチキス針等の金属など重いものを遠心力で分離したりフィルターで濾した後、精選工程を経て出版社の指定色に染色して、抄紙工程に送られます。抄紙工程ではワイヤーに原料を吹き付けて脱水し、プレスして乾燥したものが、製品となってリールに巻き取られます。段ボール原紙も同様の工程で生産されますが、脱墨処理はありません。

紙が出来るまで

 紙の原料となるパルプとは「木材から取り出した繊維」のことを言います。そのパルプは大きく分けて「機械パルプ」と「化学パルプ」があります。パルプの漂白(注)には、パルプ中に含まれるリグニン(木材の主要成分の一つ)という天然高分子物質を取り出すことが重要になります。機械パルプはリグニンも一緒にすりおろしたもので、主に新聞用紙が作られます。化学パルプは薬品や熱を使ってリグニンを溶かし出し、繊維だけを取り出したもので、情報・印刷用紙はほとんど化学パルプから作られています。パルプは薬品処理を繰り返して漂白すると、リグニンを失って細く痩せていきます。

(注)従来、パルプの漂白には塩素や二酸化塩素などの塩素系漂白剤が使用されていました。しかしながら、環境への関心が高まる中で、現在は漂白紙パルプ市場においてはECF(Elemental chlorine free:分子状塩素を使用しない)パルプおよびTCF(Totally chlorine free:塩素化合物を一切使用しない)パルプが大部分を占めるようになってきています。
紙が出来るまで その2

 紙は商品として取り引きされる場合、その厚さが品質の目安とされます。しかし、前述の痩せたパルプを原料にすると、印刷会社の要求する厚みを出すことが難しくなります。痩せたパルプで厚みを出そうとすれば、紙の密度を高くすることになります。我々がオフィスで使用しているコピー用紙は、1平方メートル64グラム程度のものですが、仮に規定の厚みを確保するために10%重量が増えたとすると、製紙に必要な水や電力などのエネルギーのみならず、輸送コストも10%増加することになります。

輸入古紙 日本国内の古紙は、過度の漂白処理やリサイクルを繰り返すことで繊維が痩せているため、株式会社トキワ製紙事業本部ではアメリカから輸入した古新聞で補っています。しかし、アメリカの多くの地域では排出時に古紙の分別が行われておらず、その他のゴミと一緒に収集されてきたものを集積ヤードで手作業により分けています。そのため、古紙としての品質が低く、ガラス瓶や動物の死骸が混入していることも少なくありません。こういった輸入古紙は、コストが高いことも問題ですが、混入している異物が除塵装置を損傷する等の問題も引き起こします。この点では、古紙の分別収集の重要性をあらためて感じました。

 また、製紙には電力や水などの資源も膨大な量が使用されます。株式会社トキワ製紙事業本部では、52,000軒の家庭が一日に使用する電力と、12,000軒の家庭が一日に使用する水を、一日で消費します。その他に紙を乾燥するための熱源や、汚水を処理するための設備にも大量のエネルギーが費やされています。株式会社トキワ製紙事業本部では解体家屋等から排出される木屑を燃料としたボイラー発電設備を導入して、電力と熱を工場に供給する等の対策をしていますが、高エネルギーを必要とする製紙そのものが環境負荷を高めているのは事実です。我々は古紙リサイクルにとどまらず、紙ゴミの発生抑制に努めなければならないということを痛感しました。 

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